黒いサンタのプレゼント

「完璧だ!」
 言ってから巌勝はぱっと手首で口を押さえた。
 いや、完璧とはほど遠い。安易に「完璧だ」などと口に出すべきではない。
 そっと周りを見ると、案の定小芭内が巌勝を見ていた。金と銀のモールを手にしている。
「『完璧』はいいが、貴様ら二人きりのクリスマスイブでこんなに部屋全体を飾り付ける必要あるのかね」
「いぐちー!」言いながら、縁壱がリビングに入ってくる。「ひとりぼっちのクリスマスになりそうな俺のために、兄上がわざわざ午後休みを取ってこんな風にしてくれてるのに」
「はいはい、『ひとりぼっちになりそうなよりちのために』、ね。まったく優しい兄上だ」
 言ってから巌勝を見てにやりと笑う小芭内に、巌勝は木製のチャームを投げつけた。
「クリスマスパーティ、楽しみだね」縁壱はにっこり笑う。
 さねぎゆも、小芭内も今夜は出かける予定で、あかつき荘には継国兄弟二人きりになる。巌勝が縁壱に恋心を抱いている事を知っている小芭内は、気を使ってあまり気の進まない仕事関係の面々の集まるクリスマスパーティーに出かけるようだ。しかし縁壱はそれを少し残念がっていた。
 巌勝の「二人きり」と、縁壱の「二人きり」は少し違う。
 でも、巌勝はもうそういう事を気にするのはやめにした。今も、「二人きり」ではあるが楽しみだと、うれしそうな縁壱の素直さを目の当たりにしたところだ。自分もそれを見習いたい。
「こんなにたくさん」縁壱は、ダイニングテーブルに並ぶ、スーパーマーケットの総菜で構成されたごちそうを見る。食べる前に温めるのだ。「俺、シチューくらい作るよ?」巌勝を見る。
「ダメだダメだ、縁壱。お前が日頃いつも飯を作ってくれるんだ。これはその感謝の気持ちというか、ま、ひとつのプレゼントなんだから」
「スーパーの惣菜がか?」小芭内はパックに貼られたシールを見ている。
「やかましい」
「そうだねプレゼントだね、なんにも作らなくてもよくて、たくさんごちそうが食べられるって思ったら、確かにすっごくうれしくなってくる」縁壱は目を細める。
「スーパーの惣菜でもか」
「小芭内!」巌勝は鼻に皺を寄せて顔を突き出した。「お前のようなひねくれた男には見えないんだ、この完璧な食卓が!」
 また完璧とか言ってしまった。
「ふむ、ミチには見えるんだな、まぁそうだろうな」
「いぐちー、俺にも見えるよ!」縁壱が兄の味方をする。
「ま、どれだけ完璧にやっても、クリスマスには黒いサンタってのがやってくる」
「黒いサンタ?」縁壱は目を丸くした。
「そうだ。甲子園に魔物が棲むように、クリスマスには黒いサンタが世界中を周回しているんだ。ミチみたいな心構えの男がいる家にはちょっと立ち寄るかもしれないから気を付けろ」
 ぽかんとした顔のまま、縁壱は巌勝を見た。
「どういう心構え、兄上?」
「えっ、あっ、ああ、ど、どうだろうな。なんていうか、そう――」惣菜のパックを指でなでる。「ごちそうをスーパーの総菜コーナーでそろえるとかそういう事じゃないかな」
 小芭内が二人に背を向けて肩を揺らして笑う。巌勝は彼を睨みつけた。
「あっ、そうだ、兄上もいぐちーも、リース見て。前つけたやつが夕方おっこちてたんだ。つけ直したの見て欲しい。途中で落ちたら嫌だから」
 三人で玄関へ移動し、ポーチへ出る。
 あかつき荘は、この夏玄関とウッドデッキをリフォームした。
 皆が住み始めてさほど日の経たないあかつき荘であるが、家自体は古いものだ。他の部分も傷めば直さねばならぬだろうが、まずは一番傷みの酷いウッドデッキと、あかつき荘の顔である玄関を直したのだ。
「見て、落ちた時崩れちゃった花も、別のやつをつけておいた」
 ドアに取り付けたクリスマスリースに、梅の造花が差してある。巌勝が微笑みそうになった時、ドアノブの辺りで小さくカチと音がした。
「あっ」巌勝は思わず声を上げた。新しいドアはオートロックなのだ。小芭内を見ると、彼はすっと自分のスマートフォンを掲げてから、それでもって解錠した。

 夕方、小芭内がしぶしぶ仕事関係のクリスマスパーティーに出かけていった。五分で抜け出したいけれども、双子のためになるべく遅く帰るようにするつもりだと言っていたが、巌勝は彼は案外早く帰ってくるんじゃないかと思っている。それまで縁壱と二人の時間を味わい尽くすのだ。
 夜になると、巌勝はごちそうの準備に取り掛かった。皿に盛り電子レンジで温めた料理をテーブルに運び、まだ温めていないものを温める。縁壱にはなにもさせないように、椅子に座らせている。彼はおとなしく座って待っていた。
 かわいらしい。自分のものだと思えばさらにかわいらしい。
 いや、ちょっと待て。俺のもの?
 そうは言えまい。
 巌勝は、電子レンジの中でやわらかくなっていく(ように見える)グラタンを見つめながら思う。
 キスをした日はもう遠い。あれから……二、三回、勢い余ってまたキスしてしまったが、縁壱は嫌ともうれしいとも言わなかった。あいつの気持ちは分からない。
 電子レンジが出来上がりの電子音を鳴らすと同時に、巌勝は扉を開けた。
「兄上」縁壱が後ろから声をかける。
「手伝いはいらないぞ」
「うん。実弥が写真送ってきたよ」
「へぇ」グラタンをテーブルに運び、縁壱のスマートフォンを覗き込む。自分のところにも届いているだろうが、ここは少しのふれあいを期待して、リビングのテーブルに置いてある自分のスマホは見て見ぬふりだ。
 実弥は勿論義勇とクリスマスイブの夜を過ごしているのだが、はしゃぎすぎたか、ディナーの写真を送ってよこしたのだ。
 畜生、スーパーの惣菜は皿にのせてもスーパーの惣菜――
「あっ! チキン!」
 手を打ち鳴らしながら声を上げた兄を、縁壱は見上げた。
「縁壱、チキンがない」
「えっ、あの、俺は別にいいと思うけども――」
「なに言ってるんだ! チキンは必須だ」
「兄上、実弥のはレストランのディナーだから、あんな生々しいチキンが写っていたけど――」
「『生々しい』って言うな」巌勝は思わず笑ってしまう。が、また背筋を伸ばし「チキンは必要」と言った。
「これから買いに行くの?」縁壱はスマートフォンを皿の横へことりと置く。「スーパーでも、車で行かなきゃならないし、雪もちょっと降ってる」
「ここ界隈の雪なんか鼻くそみたいなものだろ」
「はな――」
「お前はここで待ってろ。すぐ帰ってくるから」
「でも、スーパーだってさすがにチキンはもうないよ、タイムセールの後だし」
「なかったらファミチキ買ってくる」
「兄上、意地になってない? 俺は――」
「お前じゃない、俺だ、俺のチキンが心を欲してるんだ!」巌勝はキッチンのワゴン一段目にある小物入れから縁壱の軽自動車のキーをつかんで玄関へ走った。
「『心がチキンを欲してる』んじゃないかな」ぼそりと言って縁壱は、兄の背中を見送った。が、すぐに椅子を蹴るように立ち、自分も玄関へ走った。
「やっぱり俺も行く!」
 助手席に乗り込んでバンとドアを閉める縁壱を、巌勝は一瞬目を丸くして見ていたが、やがてにんまり笑った。
「ひとり残されるのは嫌か」
「そういう訳じゃないよ……じゃなくて、やっぱりひとりで待ってるのは嫌だから」
「なぜ」
「夜だから、ちょっと心配」縁壱は眉間に軽く皺を寄せて前を見ている。
 ガレージの灯りで、暗がりの車内にぼんやり浮かび上がるその顔を少し見ていた巌勝は、ぐいと上体を捻ってから縁壱の顔を両手で挟んで横へ向け、キスしようとした。
「痛い、首が痛いよ、やめて兄上」縁壱が巌勝の肩を押す。巌勝の持っていたキーが落ち、縁壱の腿で一度跳ね、両足の間へ落ちた。
 巌勝は黙って座り直し、前を見る。「鼻くそ」程度の雪は少し勢いを増している。とはいえ、この辺りで積もる事はないだろう。巌勝はなぜか、先ほど「鼻くそみたいなもの」と断じた事を、心の中で雪に詫びていた。
「あっ」
 縁壱の声に、巌勝はそちらを見る。彼は助手席に落ちた車のキーを持ち上げて灯りが良く当たるようにして見ている。
 巌勝も声を上げた。それは軽自動車のキーではなく、万歩計であった。仕事柄運動不足になりがちだからと万歩計を付けて散歩をしていた小芭内が、スマートフォンでまかなえるようになったとお払い箱にし、キッチンのかごに放り込んだのだ。
 縁壱は万歩計をポケットに押し込み、自分がキーを取ってくるとドアを開けかけ、また「あっ」と言った。そしてその後巌勝が「あぁぁぁぁあ!」と叫ぶ。
 二人とも、スマートフォンをリビングやダイニングに置き去りにして出てきていた。そして、玄関のドアはオートロックなのだ。スマートフォンかカードがなければ開けられない。
 それでも巌勝は車を飛び出した。「駄目元」でも、玄関ドアまで走っていく。後ろに縁壱が続いているのが分かった。
 当たり前だが、玄関ドアを解錠する事は出来なかった。
「ここまで八歩しか歩かなかった」
「うるさい」巌勝は縁壱の見ていた万歩計をはたき落した。そうしておいてから、
「ごめん」と謝る。そしてため息。
 二人とも「ちょっとそこまで」買い物に行くつもりだったので、上着も着ていない。
「どっか、窓、鍵開いてるかも」縁壱が言い、巌勝は率先して庭を歩いて窓を調べて行った。ウッドデッキにも飛び乗り、大窓を調べる。縁壱も別の窓を調べていた。
 寒い。
 家の周りを二周回ってみたが、空いている窓はなく、巌勝は庭に座り込んで芝生をむしっていた。雪に濡れた草が冷たく、じきにやめて立ち上がり、ズボンのポケットに両手を突っ込む。のろのろ歩いて裏庭に行くと、キッチンの小さな窓があり、おそらくそこは縁壱が調べたであろうが、巌勝もサッシに手をかけて開こうとしてみた。やはり駄目だ。
「ああ、俺って……」プロパンガスのボンベの隣で壁にもたれる。この失態を、ボンベは許してくれそうな気がしたが、そんなふうに甘い事を考える自分がまた嫌になってしまった。
 チキンチキンって、縁壱がいいよって言ったのに、チキンって、チキンチキン、チキンのためにこんな事になっている!
 巌勝はすさまじく冷たいガスボンベから少し離れた。が、自分は罰を受けるべきなのではないかと思い直してまた近づく。鼻水が出てきた。寒いからだけではない。
 今頃、俺が温めたスーパーの惣菜たちが、どんどん冷えていっている。
 またため息が出る。
 なぜ俺はこうなんだ。スーパーの惣菜で済ませる事にした時点でチープなクリスマスだ。チキンがあったところで、それもスーパーのチキンかファミチキだ。俺がチキンに囚われさえしなければ、今頃縁壱と二人でスーパーの惣菜の威力に圧倒されながらクリスマスイブのひと時を過ごしていたはずなのに。
「兄上」縁壱が狭い通路を回って裏庭へやってきた。巌勝は慌ててガスボンベから離れる。
「俺、ちょっと見てた、そこで」縁壱は振り向いて家の角を指す。そして、巌勝の顔をじっと見た。「すっごく寒そう」
「怒ってもいいんだぞ、縁壱。お前はいつも、なんでも我慢、我慢だ。ムカついたらちゃんと『ムカつく』っていいなさい」
「今はムカつく事、なにもないから」
 縁壱は、さくさくと細かい玉砂利を踏んで巌勝のところまで来、兄の肩をつかんでガスボンベの隣から移動させた。
「縁壱」
「うん」縁壱は続けて何か言おうとする巌勝をぎゅっと抱きしめる。
「あー……」巌勝は、縁壱の暖かさにすべての糸がゆるんだマリオネットになっていくような感じがした。なんとかして立っている。
「ひんやり兄上」縁壱は巌勝の首の辺りに冷たい鼻を押し付けて話す。巌勝はくすぐったくて仕方がなかった。それからさっと体を離し、縁壱は巌勝にキスをしてきた。初めての事で驚き、巌勝は目を見開く。縁壱は目を閉じ、くちびるで巌勝のくちびるをふさいでじっとしている。それから顔を離し、えへへと笑った。
「チューは、あったかいから。でも、ちょっと、分かんなかった」
 体はどうでも、心は十二分に温まっていた巌勝は、縁壱を勝手口の横の壁に押し付け、今度は自分のくちびるで縁壱のくちびるに蓋をした。縁壱が両腕を巌勝の背中へ回す。上唇を軽く噛み、下唇を舌でなぞり、そして巌勝は縁壱の口へ舌を差し入れるべく、歯の先を突っつく。もう意味が分かっているのか、縁壱は少し口を開き、巌勝の舌を受け入れた。
 互いに舌を絡め合っている内、自分の硬くなった股間が縁壱の腰に押し付けられている事に気付き、巌勝は慌てて身を引いた。縁壱が不思議そうな顔をして彼を見る。
「ご、ごめん、兄さん……あー、いや、あの、ごめん、ちょっと、変態的な所があったりなんかして、その――」
「変態的」縁壱は少し目を見開いてからくしゃっと顔を崩した。
「兄上! 兄上、大丈夫だよ、俺、兄上の事、よく分かっているよ!」
 縁壱の言葉に、今度は巌勝が驚く。「え、い、いつから……」
「いつかなぁ」縁壱は巌勝の手をぎゅっと握り、そのまま引いてガレージへ向かった。「例えば初めてチューされた時。いつもすっごく優しくしてくれる人にチューされたら、それがどういう事かって、俺でも分かるよ」
「そ、そうなんだ」
「ずっとずっと、めーっちゃめちゃ優しかったから、兄上、俺も大好き。でも、それがどういうのかっていうのはちょっと分からないんだ、自分でも」
「あ、ああ」
 二人は再び車に乗り込んだ。今度は後部座席で並んで座っている。
「でも、あまりに好きだから、兄上の後をついていく。この頃はそんな風に思うよ」縁壱は巌勝の体に腕を回した。巌勝も同じようにする。「こうするとあったかいね。いぐちーが朝まで帰ってこなくても死んだりはしないと思う」
「ん、そうだな。寝ないで話していれば完璧だ」
「うん」縁壱は少し黙ってから、「兄上、もし俺の事めんどくさくなって、嫌いになったら、その時は絶対にちゃんと言ってほしい。小さい頃から足枷みたいになっていたのに――」
「馬鹿な事を言うな! 足枷を愛する人間とか、それこそ変態だろ!」巌勝は縁壱を抱きしめる腕に力を込める。「気が狂いそうなほど好きなのに」
「なんか、曲の歌詞みたい」
「じゃあ、なんて表現したらいいんだ」
「うーん」縁壱は巌勝の、つんつん跳ねている髪の先を一束一束つまむ。「そういうのはいぐちーがプロだけど、さすがに訊けないね」
 巌勝は笑った。それから、チキンで強情をはったためにクリスマスイブが台無しになった事を詫びた。
「全然平気だよ、謝る事なんかない」縁壱は少し真顔になってから、「あのごちそうもおいしそうだったけど、今年は兄上が一生忘れられないクリスマスをくれたからね」にっこり笑った。

 翌朝、食べる者の少ない朝食の食卓であったが、縁壱は昨夜の惣菜の残りでサンドイッチをたくさんこしらえた。
「俺が帰って来なかったら貴様らどうしたろうな」
 サラダをもそもそ食べながら小芭内が言った。
 彼はやはりクリスマスパーティーを抜け出して早めに帰宅した。玄関で後ろから双子に声をかけられ大いに驚いたが、リビングでは事の顛末を聞き、彼には珍しく大笑いをした。二人とも「細かい部分」は省いて話したのだが、二人の表情を見て悟ったのか、口では糞みそに言いながら、彼の目は面白いものを見るかのようにきらきらしていた。
「なんだァ? なんかあったんか、昨日?」テーブルに対して斜めに座り、肘をついてサンドイッチを頬張りながら実弥が訊く。殆ど寝ていないだろうが、朝食は逃せないらしく、眠っている義勇を残して起きてきたのだ。食べ終えればまた寝るのだろう。
「何もないよ」巌勝はコーヒーの入ったマグカップをテーブルに置き、ちょっと振り返ってキッチンの縁壱を見た。丁度彼も振り返ったので目が合う。縁壱は、数秒ぽーっと無表情で兄を見ていたが、にっこり笑った。手にしていた布巾を調理台の上に置き、割烹着は着たままでダイニングまでやってきて座る。
「俺たち、閉め出されたんだよ!」
「誰にィ?」
 実弥が頓狂な声を上げ、小芭内は口元に力を入れて笑いをこらえる。
「誰って……ドア?」
 実弥は目を丸くして縁壱を見、それから巌勝を見た。そして
「ああ! ドアか! ドアかァ」と笑いながら掌でテーブルを叩いた。「お前らアホかァ」
「笑いすぎだと思う」縁壱がぼそっと言い、巌勝は彼の肩にそっと手を置いた。縁壱の温もりが伝わってくる。
「笑ってる奴が次に閉め出されると相場が決まってんだぞ」
「おゥ、確かになァ」実弥は腕を組み、「アレじゃねェか? 皆、スマホだけでやってねェでカードも持ち歩いておくってのがいいのかもなァ」
「どう考えても次はボビ岡(冨岡)だからな」と小芭内。「これまであいつが閉め出されてないのが不思議だ」
「まぁ、普段はたいてい縁壱が家にいるからな」巌勝は、縁壱の肩にのせていた手をぽんぽんと上下させた。ちょっとうつむいて、大皿に盛られたサンドイッチを見ている縁壱の頬が桃色に染まっている。同じく桃色のくちびるをきゅっと引き結んでいたが、ちょこっと動かして前歯で下唇を噛んだ。話し続けている実弥と小芭内の言葉が、縁壱を見る巌勝の頭の中でどんどん上に登って、空中に突然現れた暖炉に吸い込まれていく。言葉が、彼らの存在が、煙突を伝って冬の空へ消えていった。
「ミチ?」
 実弥に腕を叩かれて、巌勝は我に返る。自分の溺れっぷりに笑いそうになってこらえ、可笑しくてかわいくて温かかったクリスマスイブを思い出しながら、大皿からサンドイッチを二つ取った。そして、桃色ほっぺのまま兄を見ている縁壱に一つ差し出し、小さくうなずいた。

【完】